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寒立馬

寒立馬

2019|45min|ドキュメンタリー

ストーリー

「ここに思いが残るから帰ってくるんだ。巣立っても…」青森県下北郡東通村に暮らしている氣仙修さん(58歳)は有限会社コスモクリエイトで印刷業を営んでいる。寒立馬は東通村の観光資源であり、修さんは観光協会会長として県外からくる観光客、村の子供達に寒立馬の魅力を伝えている。東通村は近年、深刻な過疎化に悩ませれており、人口減少の一途をたどっている。そして、寒立馬も絶滅の危機が迫っているのだった。

解説

『東雲に勇みいななく寒立馬筑紫ヶ原の嵐ものかは』

この映画の舞台である東通村にある小・中学校の教員が書いた詩である。カモシカが厳寒に耐える姿をマタギ言葉で「寒立」と表現したことから、この馬たちは寒立馬と呼ばれるようになった。寒立馬は駿馬の生産地であった南部藩で生まれた田名部馬を祖とし、寒さと粗食に耐えられる持久力合わせ持つ馬たちは1年間を屋根のない草原で過ごす。豪雪吹き荒れる大地に立ち尽くす寒立馬。馬たちの雄大な姿を見ようと全国から写真家、観光客がこの地を訪れる。

寒立馬が生息する東通村は本州最北端青森県下北半島の北東部に位置する。津軽海峡と太平洋に挟まれた海産物に恵まれたこの土地では藩政時代から馬が海産物の荷揚げ、農耕馬、軍馬として村の人々の生活を支えてきた。

現在でも馬たちが人々の生活を見守っていることに何の変わりはないだろう。

しかし、全国的な問題となっている地域の過疎化はこの村でも例外なく進んでいる。漁業・農業が主な産業である東通村では世襲的に仕事が決まり、若者は親の仕事を継ぐか仕事を得るために県外に出ることがほとんどである。

2017年2月28日には6725人いた人々も、たった1年半で6502人なるなど人口は減少。過疎化の勢いは留まることを知らない。

また東通村は昭和39年に原子力発電所の誘致決定。2011年 東京電力1号機の着工初期に東日本大震災が発生。東通村を潤すはずだった原子力発電所は現在も稼働の目処が立ってない。

寒立馬を追うことで、東通村の問題が浮かび上がってきた作品です。

キャスト

氣仙修

氣仙亮輔


氣仙忠一

氣仙つゑ

氣仙米子


寺道和廣

春田啓治

中里市松


浮間小学校のみなさま

東通小学校のみなさま

田名部高校のみなさま

スタッフ

監督・録音・編集:吉田信治

プロデューサー・撮影:大平樹

制作:井草風雅


協力:有限会社コスモクリエイト、一般社団法人TSUMUGU、東通村役場、東通村商工会、尻屋牧野組合、尻屋漁業組合、東通東風塾、民宿 鈴屋、荒井麻莉子、石田恵美子、越善康紀、小笠原格、春日一心、小寺将太、坂本淳、坂本貴幸、田畑俊次郎、高橋千尋、浜端功、畑中威義、畑中智子、真土佑樹、棟方優月、山本義郎、山谷大貴、若佐浩司

写真提供:写真集「寒立馬」細川剛・著

使用曲:「田舎育ち」作詞・作曲 氣仙亮輔

監督コメント

僕は高校生の頃に民俗芸能に関心を持ち、地方の踊りを踊ることや装束を観客の前で見せる中で、人と文化の関わりに興味を持ちました。今回の卒業制作は高校の経験を生かして地域文化を題材とした映画を製作しようと決めました。企画を探していると一冊のパンフレットに目が止まりました。これが僕と寒立馬との最初の出会いとなりました。

一面は銀世界。マイナス10度の極寒に耐えながら雪の下にあるわずかな草を求めて寒立馬は自らの蹄で雪を掻き分け、草を食み、粗食に耐えながら春を待つ。寒立馬の姿を見ていると生とは何か、人と重ね合わせて考えてしまう自分がいた。

そんな寒立馬も近年、頭数が減少している。寒立馬の頭数が減っていくように東通村の人々もまた高齢化・若者の流出などの人口減少に悩まされています。

この映画の主人公である氣仙修さんは過疎化の問題に警鐘を鳴らしている方の一人です。村の人々からは好かれ、県外からくる若者には支援を厭わない彼の姿からは村を変えたいという思いが一身に伝わってきます。

僕はこの作品を通じて過疎化とは人だけの問題ではなく、土地・文化をもまた少しずつ減衰させてしまう問題になっていると強く感じました。

文化の立ち位置は世界の流動に伴い変わっていきます。時代が変われば、人間の生活も変わり、必要なものが不必要にもなる。寒立馬もその文化の1つなのかもしれない。

では、無くしてしまっていいのか?今、私達は静かに問われているのではないでしょうか?

この映画を見てくださった方々が『故郷』を一度考えるきっかけになれれば幸い幸いです。

監督:吉田信治

メインビジュアル

寒立馬

予告編