さえない漫画家の父と暮らす高校生の章司。彼の日課は、夜な夜な町に出かけては壁の落書き、グラフィティーアートをすることだった。描くのはいつも青いクマ、その名も｢バクーシャ｣。それは、幼いころ章司の前から姿を消した母が教えてくれた、2人だけの秘密の名前だった。ある日、章司は落書きの上に誰かが書き加えた文字を見つける。それはバクーシャ、母との思い出の言葉。母が近くにいるかもしれない。章司はさがしはじめるが……。

漫画家の父と二人で暮らす主人公の高校生の章司は、夜な夜な街に出かけては壁に落書きをするのが日課。描くのは決まって青いクマ、その名もバクーシャ。それは幼い頃に家出した母から教わった秘密の名前だった。ある日、描いた絵の上に誰かが｢バクーシャ｣という文字を書き加えていた。母親が近くに居るかもしれない。章司は母を探し始めるのだが──

作品をコミカルに盛り上げるのは、酒に溺れた漫画家の父、主人公に付きまとうJK、銭湯を営むじぃじとばぁば、酒屋の店主にお巡りさん。マンガの世界から出てきたような個性的なキャラクター達にクスッと笑顔が溢れ出す。
オープニングから軽快な音楽とともに繰り広げられる逃走シーンは必見! 情緒あふれる街並みと色彩豊かなグラフィティアートとのコントラストに加え、作り込まれたセットや美術からはスタッフの遊び心が溢れ出す。 アクション指導に『GTO』『252―生存者あり―』等でアクション監督を務めた齋藤應典。｢バクーシャ｣のデザインは世界で活躍するグラフティアーティスト、KAZZROCK協力のもと、スタッフでデザインを考案した。

青春真っただ中の男子高校生が走って、跳んで、駆け抜けるあっという間の30分。
アクション＆アートをギュッと詰め込んだ令和1発目の大バク発!!

｢他者を知る｣ことを常日頃から言われてきた。このことって難しい。映画というものは他者を主人公にし、そのまた違う他者との人間関係がドラマを面白くしていく。他者を知るということがとても重要なものである、と。

けれど、ついつい自分の感覚でものごとを考えてしまう。脚本を書くとき、演出するとき。大学の4年間で学んだことは｢自分｣以外を知ること。自分だけの感覚、人と共感できないものを写しても面白くないのではと思うようになってきた。他者を知るという言葉のコアにある何かを自分の中で掴み始めている気がしてきた。ストーリーだけではなく、作る時もそうだ。一緒に作るチームメイトもそうだ。自分だけの感覚で話し合うだけでは限界があり、説得力の欠如になる。映画を取り巻く全ては他人であり、自分中心ではない。

だが自分は歳の近い主人公の青春映画を撮ることにした。頭では他者を撮らないといけない思っていたが、大学生である今だからこそ描くことができるものがあるのではないかと思った。なんとなくそれが自分の中では、映画を面白くするために重要なことではないかと。撮ってみて、映画には最終的に監督のヒトというものが色濃く反映される。その反映されているものが主人公を通じて観客に見せられていく。登場人物という他者を通じて、ドラマというストーリーを通じて、僕が大事にしていること気にかけていることが映画のスクリーンに映し出されていく。観客とのこの共感が楽しみであり、共感されないかもしれないかと不安でいっぱいだ。