急速な経済発展が進む中国。都市が数々の高層ビルによって彩られている一方、地方では、かつての街並みへの破壊が続く。主人公･ベンは「緊縛師」。優れた表現でそれを「ロープアート」へと昇華させようとするが、その生活は苦しい。中国に限らず、日本でも、そして世界でも、表現を追求しようとするものは虐げられる。新たな文化に覚醒した中国の若者たちの前に厳しい現実が立ちはだかる。「自分らしく」これと立ち向かうベンを描く。

巨大なロープのインスタレーション。中国各地のアートイベントやクラブで華麗なパフォーマンスを繰り広げるベンは、日本の陰湿なSM表現とは無縁のアート表現を実現している。故郷の修水県には別離した妻と愛娘が暮らす。その養育費や慰謝料の負担は重い。35歳というベンの年齢は、中国では、もう若者とは呼ばれない。社会の偏見は厚く、ロープアートの展望も厳しい。ベンは深圳の物流会社で暮らしを立て直し、新たは表現への回路を開こうとする。

選択、一人の人生の中は数え切れないほどの選択がある。中国、経済発展は巨大な変化を伴っている。社会と時代の変化は、人々に多くの選択肢を与えている。緊縛師、日本で誕生し、中国では存在しなかった表現者である。緊縛はロープで他人を縛ることである、ベンの人生も無数の見えないロープで縛られているかもしれない。ベンの生活を記録することを通して、彼の人生の中の真実、理想と現実の中で何を選択していくかを見つめた。この映像で新しい視点を観客に見出してほしい。私は近年の中国のドキュメンタリーやドラマ映画では、表現の主流を脱離し、真実の人物像を見ることは少ない。もっと普通の人々にカメラを向けたいと思っている。私はかつての多くのインディペンデント作品に憧れる。非商業的な作品が数多く作られていたからだ。それは非常にロマンチックで理想的な未来を予見している。