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2024|31min|ドラマ
わたしは、スア。長嶺スア。高校2年生。軽音部に入ってるけど、部活では同級生の美南から嫌がらせを受けてる。「あんたに弾けるところなんてない」って、読めなくなるくらい楽譜を黒いペンでぐちゃぐちゃに汚された。ボコボコにしてやる! まあ…、頭の中で…だけど。その日、わたしは屋上で定時制クラスの男の子に出会った。彼は突然、そのぐちゃぐちゃに汚されたわたしの楽譜に、いきなりライターで火をつけてこう言ったの。「嫌なもんは燃やした方がいい」って。まさにその瞬間、彼は私の“神”になった! 私にできないことをやってのけた彼は、私の理想であり生きる希望。彼は理解できないって言うけど、そんなの理解しなくていい。だけど、美南が私が知らない神の過去を知っていて…。
スアの“妄想”シーンはこの映画にとって重要な要素の一つだ。そのシーンに1日かけて撮影したり、スタッフだけで何度もリハーサルを重ねて完成させた。日々の生活の中で、私たちは様々な現実問題に直面している。うまくいかないこと、理不尽なこと、戦わなくてならないこと。誰もがそれに正面から立ち向かえるわけではないと思う。でも、ある日突然、そんな問題自体を否定するように、非日常的で理想的な人物が目の前に現れたら現実からは目を背けたくはならないだろうか。しかしその人物が自分の理想と違ったら…。現実逃避しながらも、切実に“神”と向き合ったスアが出した答えとは。
妄想癖のある高校2年生、長嶺スア。彼女は所属する軽音楽部でもちょっと浮いた存在で、同級生の美南からことあるごとに嫌がらせを受けていた。楽譜を汚されたり、楽器の片付けを押し付けられたり。特に大きな事件にはならない程度のいじめに笑って誤魔化すことしかできず、いつも妄想の世界に逃げることでやり過ごしていた。
そんなある日、運命の出会いが訪れる。
楽器を片付けに向かった屋上の踊り場で、ふと見上げると屋上扉が開いていることに気づいた彼女は、何かに吸い寄せられるように屋上へ出ていく。そこで、スアはひとりの男子生徒に出会う。塔屋の上から現れた金髪の彼は、太陽の光を受けて輝いていた。彼は、汚されてしまったスアの楽譜を手に取ると、突然ライターで火をつけて燃やし、一言。
「嫌なもんは、燃やした方がいい」
その瞬間、スアの心に火がともった。最悪な毎日を彼が燃やしてくれたように感じたスアは、彼を「神」と崇拝するようになる。心を救ってくれた神にもっと近づきたいと、髪の毛を神と同じ金色に染めてみたり、神を尾行してみたり、お供え物と称して果物の籠盛りを渡してみたり、神の発した言葉を聖句のようにノートに書き留めてみたり。
神は心の支えであり、学校生活に彩りを与えてくれる存在。神だけが唯一の希望の光だった。
しかし、あるときスアは美南から神の「過去」を聞かされる。それは、スアにとって「神」という存在を大きく揺るがすものだった。
瀬戸芭月
森山瑛
森川莉衣
水野直
二宮弓子
藤井志帆
篠田和喜
監督:杉本啓輔
脚本:赤城杏奈
音楽:齋藤央征(昭和音楽大学)
ギター演奏:よしださくら
プロデューサー:覃星翼
制作:嶋村望、董欣璐
助監督:本多俊介、青木貴織子、王榕燕、郭亮廷
撮影:朱恒斌
撮影助手:河原夏来、陸鵬駿、趙婉君
照明:西田陽
照明助手:鄭博珩、木村謙介、伊藤了
録音:李賢
録音助手:服部くるみ、洪若含、陳奕翰、金子亜由舞
編集:河野義継
編集助手:引間葉月、小島朱莉、安田優晟
スクリプター:孫若琁、李向欣
車両:藤崎仁志
グレーディング:(株)IMAGICAエンタテインメントメディアサービス 河原夏子
美術協力:高津装飾美術、 日映装飾美術
車両協力:バルクレンタカーアンドセールス
エキストラ協力:斉藤希歩、南侑冶、葛西勇哉、石野輝真、合田篤慶、玉置正義、中葉優斗、馬場悠人、揚翔升、長津徹、井上雄介、増田宏祐、冴人、清水克彦、張若林、佐々木瑠七、熊傲、石川航世、山田晃己、赤刎千久子、小峰亜希子、鄭大熙、寺田みなみ、解運、小池美和、梁献丹、陳佩晴、村上萌菜美、劉子睿、陳靖日、李婧怡、橘璃歩、山口柚香、川崎美優、内田有希乃、浅野愛、大同彩花、池谷咲蘭、WU YUNTZU
衣装小道具協力:加藤和子、青木順貞、入倉拓也、金子初音、高部弘孝、鷹野友宥、松竹衣裳
ロケ協力:熊谷市スポーツ・文化村「くまぴあ」、みうら・宮川フィッシャリーナ、小平市中央図書館、みらい館大明、経堂ボウル、熊谷フィルムコミッション、三浦消防署
録音協力:井関涼介、石川航世
取材協力:学校法人山崎学園富士見中学校高等学校 軽音楽部のみなさま、神奈川県立相模原弥栄高等学校 軽音楽部のみなさま、神奈川県立向の岡工業高等学校、川崎市立高津高等学校
推しというものが、最近では当たり前のものとなっていると思います。では、なぜ推しが、これほど世間に浸透していったのでしょうか。それは、自分では簡単に出会うことのない煌めきによって、現実に蔓延っている問題から目を背けることができる、ということが1つにあると、私は思いました。では、推しが自分の理想と違ったら。もっと言うと、自分の目の前に立ちふさがっている問題を生み出すような人間だったら、どうでしょうか。
恋人だったら、別れたら簡単に済む話です。ですが、推しというものは、出会ってから今までの間の人生に光を与えてくれた、切っても切れない存在です。もしかしたら、私たちは推しを通じて、自分と向き合っているのかもしれません。
そんな、「推し」と「私」の問題を、どうしようもないヲタクの生き方を、メディアでは取り上げられない程度のいじめを、フィクションだと割り切らないでください。
正しいことを選択し続けられる人間なんていません。だから、間違えてもいい。失敗してもいい。推しに燃やされたいと思ってもいい。スアの行動や決断、光輝や美南の思いに、すべての人が共感できるとは思いません。ただ、痛くてかわいいスアの中にある切実さを、感じ取ってほしいです。