3年次後期の授業「キャリア・サポート」は、専門コースに進んだ学生の就業支援を具体的に行う講義です。映画・映像業界の最前線で活躍する卒業生やゲスト講師をお招きし、同業界のみならず社会人として働くことの意義を説いていきます。
2025年11月28日に実施した講義では、「就職とフリーランス」というテーマのもと、株式会社バスク(フジテレビグループの技術会社)で現在アシスタント・エディターを務める卒業生の堤田絢音さん(日本映画大学11期 2025年卒)に講師をご担当いただきました。
堤田さんは高校では放送部で作品制作に打ち込み、コロナ禍で大会が消滅する悔しさをバネに本学を受験。当初は監督志望でしたが、実習を経て編集の仕事に魅力を感じ、編集コースに進んだ卒業生です。
ドラマ・映画編集の最前線!「バスク」での仕事とは
堤田さんが勤務する株式会社バスクはフジテレビグループの技術会社で、フジテレビ系のドラマや映画を中心に、撮影・音声・編集などの技術パートを担っています。
現在、堤田さんは編集部で働いており、同部署には「デジタイズ作業」と「各パート(オンライン/オフライン/グレーディング)ごとの仕事」があります。
デジタイズとは、撮影された素材のバックアップを取り、編集ソフトで扱えるように変換する作業のこと。「ワンカット飛ばしただけで大きな損害になりかねない」という非常に責任の重い仕事であり、常に緊張感を持って取り組んでいるそうです。
アシスタント・エディターとして特に印象的だったのは、監督の「割り台本」を元に映像を仮につなぐ「粗編(あらへん)」の作業。編集技師(エディター)が手を入れる前の段階ですが、ここから技師の手によって映像が見違えるようにテンポ良く、魅力的に生まれ変わる様を間近で見ることが、最大の学びでありやりがいだと語ります。
「フリーランス志望」から「就職」へ舵を切った理由
在学中は映画監督を目指し、その後「オフライン編集(デジタイズで軽くしたデータで撮影素材をつなぎ物語の流れを作る編集)」の面白さに目覚めた堤田さん。当初は、映画業界で一般的な「フリーランス」のアシスタントになるつもりでした。しかし、大学3年生の終わりころ、現実的な壁に直面します。
卒業後には奨学金の返済も生じていく中で、「家賃を払ってご飯を食べ、たまには趣味も楽しみたい」。そう考えた時、安定した給与と福利厚生がある「企業への就職」へと切り替える決断をしました。
就職活動を通して得られたもの
オフライン編集ができる会社に絞って受けたものの、就職活動は苦難の連続でした。「何がダメだったのかわからないまま否定される」という就活特有の辛さに、心が折れかけたこともあったそうです。
それでも諦めずに続けられたのは、同じ業界を目指す友人の存在と、キャリアサポートセンターの方の支援、そして「ここで折れたらこれからの人生も頑張れない」という意地でした。
就職活動を通して得られたものは、内定だけではありません。 「自分の強みや弱みを徹底的に見つめ直す機会になったこと」、そして「自分という商品を企業(相手)にどう売り込むかという視点」です。ある意味それは恋愛のマッチングにも近く、相手(企業)の良いところを見つけ、自分がどう貢献できるかをアピールする。この経験は、クライアント(監督やプロデューサー)と仕事をする現在の環境でも大いに役立っているそうです。
「就職活動は、人生で一番死ぬ気で頑張った経験になりました。あれを乗り越えられたから、仕事で辛いことがあっても『就活よりはマシ』と思えます。」
在学生・映像業界を目指すみなさんへのメッセージ
堤田さんは「自分一人で抱え込まず、人に頼りながら動くことが大切」と重ねて強調します。
そして、自分なりの「譲れない条件」を明確にすることの重要性も併せて説きます。
「フリーランスも素敵ですが、会社員には会社員の良さがあります。技術を学びながらお給料がもらえ、守られた環境で成長できる。もし迷っているなら、新卒というカードを使って一度企業に入ってみるのも一つの選択肢です。」
エンドロールに自分の名前が載り、その作品が全国の何百万人に届く。その責任と喜び。
堤田さんのお話からは、編集の現場が求める責任感と、粘り強く学び続ける姿勢の重要性が伝わってきました。
この度の講義は映画・映像業界を目指す学生にとって、あるいは就職かフリーか進路に迷う学生にとって、仕事の実像を知り、今何をすべきかを考える貴重な機会となりました。
過去のキャリア・サポート授業(抜粋)
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