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編集

今井 剛

imai tsuyoshi
観客に一番近い立場から
視点を提示する

編集とは、膨大な素材を
1本の映画へとつなぐお仕事。
『図書館戦争』『るろうに剣心』
シリーズや『AI崩壊』『劇場』
『窮鼠はチーズの夢を見る』など、
話題作を数多く手がける
今井剛さんの、
編集哲学の一端に触れてみた。

プロフィール

今井 剛

imai tsuyoshi

1969年静岡県生まれ。日本映画学校第4期編集コース1992年卒。JAY FILMを経て、04年、映像編集事務所 ルナパルクを設立。『GOD EATER』『ホッタラケの島 ~遥と魔法の鏡~』などアニメーションの編集も手がけている。

【おもな作品】
『フラガール』(06)
『悪人』(10)
『GANTZ』シリーズ(11)
『怒り』(16)
キングダム』(19)
AI崩壊』(20)
グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇』(20)
劇場』(20)
窮鼠はチーズの夢を見る』(20)
『今際の国のアリス』(20・NETFLIX作品)
映画大好きポンポさん』(21)

 

 

近作情報

  • 流浪の月

    監督・脚本/李相日 原作/凪良ゆう 撮影監督/ホン・ギョンピョ 出演/広瀬すず 松坂桃李 横浜流星 多部未華子 ほか 配給/ギャガ (22/日本/150min)
    雨の夕方。びしょ濡れの10歳の家内更紗に傘をさしかけてくれたのは19歳の大学生・佐伯文。家に帰りたがらない更紗の意を汲み、文は部屋に入れ、更紗はそのまま2か月を過ごす。ほどなく文は更紗の誘拐罪で逮捕されてしまう。15年後、ふたりは「被害女児」と「加害者」という烙印を背負ったまま再会する……。5/13~全国公開

    2022「流浪の月」製作委員会

    公式サイト
    https://gaga.ne.jp/rurounotsuki/

中学校時代に『悪漢探偵』を観て、「アジアでこんなアクション映画がつくれるのなら日本でもできるはず」と感じたことが、映画界に興味を持ったきっかけです。

演出をやりたいと考え、当時3年制だった日本映画学校(現・日本映画大学)に進みました。

興味の向かう先は
映画づくりの最終プロセスへ

入学時は脚本・監督コースでしたが、物語の最終形を組み立てる編集という職務に興味が湧き、2年次に編集コースに転科したんです。

印象に残っていることのひとつは、(転科前の脚本・監督コースの)ゼミで佐藤武光先生がおっしゃった言葉。「ストリップ劇場の踊り子も、最初から裸では面白みがない。じらし方だったり、演出にはそういう感覚が必要」。興味深い発想だと感じました。

プロデビュー作は『妻はフィリピーナ』っていうドキュメンタリー。もともと卒業制作としてつくっていた作品なんですが、一般公開をするため、卒業後に追加撮影をして、その編集も僕が担当した、という流れです。

観たいと思ったときに
観たいものを提示する

編集とは、映像だけでなく、音楽も含めて、緩急をつけながら、お客さんの生理に沿った映像を仕上げる仕事。お客さんの視点に立つ、ということが求められます。

たとえば「何かを探していて、見つけた」というシーンなら、引きの画だけでなく、その物に寄った画も見せる。観客が「観たい」と思ったときに、観たいものを提示するということです。

作業をするにあたっては、現場でどういう映像が撮られたか、その素材があることがまず前提です。たとえば、女優さんのかわいい表情が撮れていたら、当然その画を使いたいと思いますよね? 「では、この表情を活かすために、どうカットをつなぐといいんだろう」と気にしだすと、……自ずと編集方法も見えてきます。

なので、俳優さんが発する力が弱いとヤル気が起きません……というのは冗談ですが(笑)、もし引きの画ばっかりだったら、全体の空気だけを伝えることになってしまう。

そこに、寄りのカットがあれば、「この表情、この目パチを使おう」とか、「目線をこう変えよう」「相手の言葉へこう反応する」などと、見せ方の可能性が広がります。

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※当時と違い、現在の日本映画大学では、
 コース名称と内容が変わったり、
 開講されていないコースがあります。