2022年の興行収入ランキングで
トップに輝いた『ONE PIECE FILM RED』。
監督の谷口悟朗さんは、
経験と自身の確信に基づいて
道を切り拓く、
信念のつくり手だった。
プロフィール
谷口 悟朗
66年愛知県生まれ、日本映画学校1期映画演出コース1989年卒。メタバース上のブランドであるプロジェクト「Azuki」において24年、新たに始動するアニメアンソロジー「anthology series」では、クリエイティブプロデューサーとしてコンテンツを統括予定。
【おもな作品】
『プラネテス』(03~04)
『コードギアス』シリーズ(06~24)
『ID-0』(17)
『スケートリーディング☆スターズ』(21)
『バック・アロウ』(21)
『ONE PIECE FILM RED』(22)
近作情報
Enter The Garden
エピソード1
「The Waiting Man -待つ男-」クリエイティブプロデューサー/⾕⼝悟朗 監督/⼭元隼⼀ シリーズ構成/岸本卓 キャラクターデザイン/⻄村キヌ 声の出演/⻤頭明⾥ 杉⽥智和 アニメ制作/電通 Qzil.la IMAGICA Infos (25/日本 アメリカ/8min46sec)
日本アニメ風のイラストとストリートスタイルを組み合わせた横顔のキャラクターが特徴的なNFTプロジェクト「Azuki」。『Enter The Garden』は、電通が「Azuki」を手がけるChiru Labsと共同で贈るアニメ作品。三部作からなるアンソロジーシリーズのうち、エピソード1に加え、エピソード2「Fractured Reflections」が公式サイトで公開中
公式サイト
https://www.azuki.com/
──高校時代から監督志向だったとのこと。映画をつくっていたんですか?
やっていたのは演劇です。
映画を撮るとなると8ミリですが、カメラや映写機、フィルム代に現像代……とにかくお金がかかる。うちは裕福ではなかったので、映画は撮りたくても、それができない。ぴあフィルムフェスティバルは当時もありましたけど、あんなの金持ちの集まりだと思っていました(笑)。
幸いにして安価な3本立ての名画座がありましたから、観るということではかなり観ていたと思います。
──日本映画学校(現・日本映画大学)を選んだのはなぜですか?
当時の映像業界は閉鎖的。高校時代、どうしたら道筋をつくれるか考えていました。
一方、アニメ誌にはスタジオの連絡先がふつうに載っていた。実写の方は無理でも、アニメ業界ならたどり着けるんじゃないか──。私が行きたいスタジオの連絡先は載っていなかったので、編集部に問い合わせたんです。
──教えてくれました?
断られました。当然ですよね(笑)。
その後わかったことですが、当時のスタジオが必要としていたのはアニメーターであって、それ以外は求めていなかった。もし連絡が取れたとしても、監督への道を開くことはできなかったんです。
映像にまつわる役職、ジャンルは
少しでも多く経験したかった
卒業後は何をやっていいのかわからなくてグラグラしていました。大学に行くことも考えたけど、まずはメシを食わないといけない。そこで地元・愛知県のテレビ局の孫請けみたいな会社でADのバイトを始めて、スポーツ中継からバラエティ、ドラマ、ニュース報道など、ひと通り携わりました。
テレビ局入社という選択肢は考えなかったですね。それはサラリーマンになる道であって、いくら映像に携わりたくても部署異動がある。テレビ局という組織を維持するための人材を求めているわけですから。
そんなときに「今村昌平さんが設立した学校が、日本映画学校に改称・改組する」と聞いたんです。一番魅力的だったのは、現場へのルート、ツテがあるということ。
──そうして進学されたと。
その前に生活費の問題があったので、一時期はホストをやることを考えました。ところが当時のホストにはスーツを買ったりする準備金が必要だった。そんな金があったらそもそも働くわけがない(笑)。
最終的には新聞奨学生制度を利用しました。新聞さえ配っていれば、住むところと食事は確保される。本当に助かりました。