映画、ドラマと次々に依頼を受け、
作品が途切れることのない
脚本家の港岳彦さん。
2023年には手がけた
映画3本、ドラマ1本が
立て続けに公開、放送。
平坦ならざるその道のりが
港さんの矜持を育んだ。
プロフィール
港 岳彦
74年宮崎県生まれ。日本映画学校7期期1995年卒。24年4月より九州大学で教授を務める。
【おもな作品】
『あゝ、荒野 前篇・後編』(17)
『宮本から君へ』(19)
『アナログ』(23)
『正欲』(23)
『仮装儀礼』(23)
『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(24)
近作情報
連続ドラマW
I,KILL監督/ヤングポール 服部大二 脚本/港岳彦 ばばたくみ 川滿佐和子 出演/木村文乃 田中樹 ほか 制作プロダクション/松竹撮影所 製作著作/WOWOW (25/日本/全6話)PG12相当
関ヶ原の合戦から35年後の日本に突然、人を襲う化け物「群凶(Gun-kyou)」が現れ始める。忍びという過去を隠し平和に暮らしていたお凛は、血の繋がらない娘・トキを守るために壮絶な戦いに巻き込まれていくのだった。一方、人の意識を持ったまま群凶になってしまった”半群凶”の男・士郎はある人物を探していた──。25年5/18 22:00〜WOWOWにて放送・配信スタート
公式サイト
https://www.wowow.co.jp/drama/original/i-kill/
──脚本家の出発点はどこにあったのでしょう。
12歳のときに目を怪我して、半年間入院したことがあったんです。支援学級に通っていた弟のクラスの先生が「だったらこれを読め」と大量に本を持ってきてくれて、やることがないから、ずっとそれを読んでいました。
動物好きの僕を思ってか、ムツゴロウさんの本ばかりだったのですが、そのうち畑正憲が愛読しているという北杜夫のエッセイを取り寄せて読んだんです。そのエッセイを読むと、作家ってずいぶんだらしない毎日を送っている。それで「この職業、最高だな」と思って、物書きに憧れたのが最初です(笑)。
北杜夫は「トーマス・マンを読め」とか、いろんな作家の名前を挙げていて、文章を追っていくうち、中学に入る頃にはドストエフスキーに出会って、その世界観に圧倒されました。
──中学生には難しくなかったですか?
難しい部分もありますが、文体は平易なんですよ。高校に入って映画を観るようになって、映画と小説の中間ぐらいの仕事ってないかな?と考えたら、脚本家があった……振り返るとそんな感じなのかな?
──映画を観るようになったきっかけは?
すごくガラの悪い高校だったんです。勉強しなくていいといえば、しなくてもいい。「せっかくだから趣味でもつくろうかな」と思って映画を観始めました。
当時、『その男、凶暴につき』が公開されて、「監督たけし:北野組全記録」というメイキング本も出た。簡単に言うと、野沢尚さんの脚本を現場で武さんがいかにぶち壊したかという記録で(笑)、クリエイティブの面白さが全部詰まっていた。あの映画とその本の衝撃で、ダサい印象だった日本映画に可能性を感じたし、仕事として携わりたいと思いました。
「演劇活動」という実績は
アピール度が高いかもしれない
──最初から脚本家志望だったんですか?
当時は監督志望だったと思います。高2の頃には日本映画学校(現・日本映画大学)へ進みたいという気持ちになっていました。
──どこに惹かれたんでしょう。
資料に、でかでかと「人間を描く」と書いてあるのを見て「これだ!」と思うところがあったんです。よく見ると「高校時代、どんな活動をしていましたか」というチェック項目もある。思いついたのは「演劇をやれば、アピールできるんじゃないか?」。
──そこで演劇部の扉をたたいた、と。
ところが演劇部は廃部が決まっていて、部室は──いまだから言ってしまうと──喫煙所と化していました(笑)。