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編集

柳 圭介

yanagi keisuke
「こんなつなぎはないですよ」というアイデアから、
すごいものが生まれることも

──アニメーションの編集は、実写とどう違いますか?

最終的にいい作品をつくろうというところは一緒ですけど、アプローチの仕方が少し違います。
アニメーションではカットとカットのつなぎだけではなくて、ワンカットの中でのセリフの間まで、我々と演出家、監督と相談しながらつくることができます。『劇場版 呪術廻戦 0』のアクションシーンは、日本中のスーパーアニメーターたちが集結してつくっているので、こっちはやることがないぐらいでした。
その分、ラストの五条悟と夏油傑の会話の間の取り方など、朴監督や演出の皆さんと話し合いを重ね、お互いを信頼し、編集することができました。

──間が重要だったのですね?

乙骨くんが登校するシーンも、学校に行きたくないという後ろ向きな感情を出すためにどれぐらいの間をつくるか考えました。
『呪術廻戦』のチームは監督がひとりで悩んでつくるという班ではなくて、いろんなパターンをつくってディスカッションをしていけるので、面白かったです。

意見を言いづらい
空気をつくらない

──編集に向いている人は?

話が聞けて、会話ができる人ですね。ウチのバイトに普段は芸人をやっている池田カシージャスくんがいるんですけど、話が面白い。
飲み会でも、彼がいると場が盛り上がるんです。僕も余計なことをしゃべってしまったりするくらい、話し方、聞き方がうまい。それを勉強したいと思ったし、彼も編集をやってみたいと言うので、働いてもらうことにしました。
いまでは年下の監督も増えてきて、とくにテレビシリーズの『呪術廻戦』は、作画のスペシャリストが演出をするケースが多かったんです。そういう人は「演出になったらこういうことをやりたい」と心に秘めている。それに対して、編集者が「そんな編集はできない」みたいな言い方をしたら、次の意見を言いづらくなってしまう。
だから、そういう空気をつくらないようにしたいですし、むしろ「こんなつなぎはないですよ」と思えるようなものから、すごいものが生まれたりするんです。だから、監督が言ったことをとにかく試します。

「できない」では
うちに来る意味がない

──監督のイメージの具現化を助けるんですね。

編集室に来る監督は、「大丈夫かな?」って多少不安な気持ちがあると思います。「これを外したら次の仕事はないぞ」というプレッシャーもある。なのに、僕らがしけた顔をしていたら、一番きついのは監督なんです。
だから、どうやったら気持ちよくいてもらえるのかなと考えます。
監督から「これ、大丈夫?」と聞かれたら、「全然大丈夫ですよ」と、つなぐのが我々の仕事なので。「できない」では、うちに来る意味がないじゃないですか。

いかにしゃべらせるか
ということが大事

──そのスタンスになったのは、きっかけになった人や作品があったのですか?

実写の監督は一座をまとめる感じなので、ぶつかりながらコミュニケーションを取るタイプの人が多い。アニメの監督は全員ではないですけど、コミュニケーションが得意ではない人も多いんです。
めしを食って初めて「この人、こんなことを思っていたんだ」と思うこともありました。だから、編集室でいかにしゃべらせるか、ということが大事だと思います。

──編集の醍醐味は?

監督に納得して、帰ってもらうことが大事だと思うんです。
どの監督も面白い考えを持っている。でも、それをそのままやると観客に伝わらないこともあるので、編集で監督が納得した上で、観客にも届くように整理する。それで観た人が喜んでくれたら、編集の醍醐味というか、喜びですね。

オススメ! この1本

10代のときに「こういう構成があるんだ」と驚いた
『レザボア・ドッグス』

僕はクエンティン・タランティーノ監督の信者で、最初にこの映画を観たときは衝撃でした。
時間軸がいっぱいあるじゃないですか。編集でつなぐことで、こんな風にパラレルワールドがつくれるんだ、って驚きました。
でも、実はあれは構成の力で、脚本によるものだったということをあとで気づきました(笑)。

[photo]久田路 2022年2月に柳編集室で行ったインタビュー

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