2023年にアニメ『D4DJ All Mix』で
監督デビューした鈴木大介さん。
これまでに担った肩書きの多さは、
多才さの裏付けでもある。
それらすべてに共通しているのは
「つくることが好き」という原動力だ。
プロフィール
鈴木 大介
69年茨城県生まれ。日本映画学校4期ドキュメンタリーコース1992年卒。06年設立のサンジゲンで取締役を務める。
【おもな作品】
『映画 プリキュアオールスターズDX3 未来にとどけ!世界をつなぐ★虹色の花』(11・CG監督)
『009 RE:CYBORG』(12・アニメーションディレクター)
『蒼き鋼のアルペジオ アルス・ノヴァ』シリーズ(13〜15・3DCGアニメーションディレクター)
『D4DJ First Mix』(20・副監督)
『D4DJ All Mix』(23・監督)
近作情報
ニワトリ・ファイター
原作者/桜谷シュウ 監督/鈴木大介 シリーズ構成/瀬古浩司 プロデューサー/ジョセフ・チョウ アニメーション制作/サンジゲン 企画/SOLA ENTERTAINMENT 製作/VIZ Media,ヒーローズ
突如現れ、圧倒的な力で人類への攻撃を始めた “鬼獣(きじゅう)”と呼ばれる異形のモノ。 街を破壊され、絶望に暮れる人々。 誰もが諦めかけたその時、鬼獣に立ち向かう一つの影が! 「テメーら、トサカにきたぜ!!」 人類の前に降り立った、小さな希望。それは一羽のニワトリだった!!!!© Shu Sakuratani/Kino-HERO’s, VIZ Media
──CGディレクター、モデリングディレクター、アニメーションディレクター、監督と、さまざまな役職でお仕事をされています。
もともとサンジゲンがCGの会社なので、僕も最初はCG屋さんとしてスタートしたんです。ここ数年、CGを請け負うだけじゃなく、自社制作も進めようという方針が立って、会社から「多少は造詣が深いだろうし」ということで監督を半ば強制的にやらせてもらっています(笑)。
なので、いまの肩書きは「監督」です。去年初めてやったばかりなので、おこがましいと思うところはありますが。
──そんな鈴木さんのルーツからお聞きしたいのですが。
子どもの頃から絵を描くことは好きでした。映画に開眼したのは、月並みですけど『スター・ウォーズ』を観たときです。小学校4年生くらいですかね、あの頃は『スーパーマン』や『未知との遭遇』が次々に公開されていた。
その後、『機動戦士ガンダム』にも強烈なインパクトを受けて、すっかりアニメ、特撮好きになり、中学生の頃には8ミリで映画を撮ったりしていました。
──映画少年だったわけですね。
学校で上映もやりました。気づいたら大勢の生徒が観てくれていて、上映が終わった瞬間に拍手が沸き起こって……。
──どんな映画だったんですか?
SFです。ビームを合成したり、宇宙船のミニチュアをマスクで抜いてコマ撮りして、フィルムを巻き戻して今度は星空を撮る、とか。
──多重露光ですね。
いま思うと、一度に全部撮ってもあまり変わらなかった(笑)。その頃から「これを仕事にしたい」という気持ちが芽生えていました。
高校に上がったときには、日本映画学校(現・日本映画大学)に進学しようと決めていた気がします。
──ずいぶん計画的ですね。
取り寄せたパンフレットがよくできていて、「ちゃんとしてる」と、だまされたところもあるかもしれない(笑)。
その視線の先を
観客は観たくなる
──入学していかがでしたか?
中学、高校時代は、映画好きはクラスにひとりいればいい方で、映画の話なんて滅多にできなかった。ところが映画学校はまわり全員が映画好きだから「ここは天国だ」という感じでした。
あの頃ほどめちゃくちゃをやっていた時代はないし、実践的なことを多く学べた場所でもあります。
──印象に残った授業はありますか?
強烈だったのは、バリバリ現場の監督さんでもある佐藤武光先生。
たとえばカット割の基礎。主人公が女のコの足に見惚れちゃうというシーンで、まず主人公の顔にカメラがグッと寄って、「次のカットは何を映すんだ?」と。正解は女のコの足なんです。主人公が「はっ」となる顔を映したら、その視線の先を観客は見たくなる。カット割りは、観客と登場人物の感情に乗せてやらなければ意味がない。当時はそんなことすらわかっていなかった。