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脚本家

港 岳彦

minato takehiko
より多くの人に伝わる
自己表現の仕方がある

映画、ドラマと次々に依頼を受け、
作品が途切れることのない
脚本家の港岳彦さん。
2023年には手がけた
映画3本、ドラマ1本が
立て続けに公開、放送。
平坦ならざるその道のりが
港さんの矜持を育んだ。

プロフィール

港 岳彦

minato takehiko

74年宮崎県生まれ。日本映画学校7期期1995年卒。24年4月より九州大学で教授を務める。

【おもな作品】
『あゝ、荒野 前篇・後編』(17)
『宮本から君へ』(19)
『アナログ』(23)
『正欲』(23)
『仮装儀礼』(23)
『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(24)

近作情報

  • ゴールド・ボーイ

    監督/金子修介 原作/紫金陳(ズー・ジンチェン)「坏小孩(悪童たち)」
    脚本/港岳彦 出演/岡田将生 黒木華 羽村仁成 星乃あんな 前出燿志 松井玲奈 北村一輝 江口洋介 配給/東京テアトル チームジョイ (24/日本 中国/129min)
    事業家の婿養子である東昇は、遺産相続を狙い、義父母を崖から突き落として殺害する。しかしその瞬間は、3人の少年たちに偶然カメラで捉えられていた。少年たちは東昇を脅迫して大金を得ようと画策し始める──。3/8~全国公開
     

    ©2024 GOLD BOY

     
    公式サイト
    https://gold-boy.com/

──脚本家の出発点はどこにあったのでしょう。

12歳のときに目を怪我して、半年間入院したことがあったんです。支援学級に通っていた弟のクラスの先生が「だったらこれを読め」と大量に本を持ってきてくれて、やることがないから、ずっとそれを読んでいました。
動物好きの僕を思ってか、ムツゴロウさんの本ばかりだったのですが、そのうち畑正憲が愛読しているという北杜夫のエッセイを取り寄せて読んだんです。そのエッセイを読むと、作家ってずいぶんだらしない毎日を送っている。それで「この職業、最高だな」と思って、物書きに憧れたのが最初です(笑)。
北杜夫は「トーマス・マンを読め」とか、いろんな作家の名前を挙げていて、文章を追っていくうち、中学に入る頃にはドストエフスキーに出会って、その世界観に圧倒されました。

──中学生には難しくなかったですか?

難しい部分もありますが、文体は平易なんですよ。高校に入って映画を観るようになって、映画と小説の中間ぐらいの仕事ってないかな?と考えたら、脚本家があった……振り返るとそんな感じなのかな?

──映画を観るようになったきっかけは?

すごくガラの悪い高校だったんです。勉強しなくていいといえば、しなくてもいい。「せっかくだから趣味でもつくろうかな」と思って映画を観始めました。
当時、『その男、凶暴につき』が公開されて、「監督たけし:北野組全記録」というメイキング本も出た。簡単に言うと、野沢尚さんの脚本を現場で武さんがいかにぶち壊したかという記録で(笑)、クリエイティブの面白さが全部詰まっていた。あの映画とその本の衝撃で、ダサい印象だった日本映画に可能性を感じたし、仕事として携わりたいと思いました。

「演劇活動」という実績は
アピール度が高いかもしれない

──最初から脚本家志望だったんですか?

当時は監督志望だったと思います。高2の頃には日本映画学校(現・日本映画大学)へ進みたいという気持ちになっていました。

──どこに惹かれたんでしょう。

資料に、でかでかと「人間を描く」と書いてあるのを見て「これだ!」と思うところがあったんです。よく見ると「高校時代、どんな活動をしていましたか」というチェック項目もある。思いついたのは「演劇をやれば、アピールできるんじゃないか?」。

──そこで演劇部の扉をたたいた、と。

ところが演劇部は廃部が決まっていて、部室は──いまだから言ってしまうと──喫煙所と化していました(笑)。

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※当時と違い、現在の日本映画大学では、
 コース名称と内容が変わったり、
 開講されていないコースがあります。